ダイバーシティコラム

講師VOICE

NEW

企業内のSOGI/LGBTQの理解促進:人事担当者として知っておくべきこと⑤

もしもSOGIハラやアウティングを見かけたり、相談を受けたら

 

SOGIハラスメントとアウティングについて解説を進めてきましたが、実際にそのような言動を見かけてしまった時は、どうすればよいのでしょうか。

 

SOGIハラやアウティングを見かけたら

もし職場で、SOGIハラスメントやアウティングを見かけた時は、「そういう話題は職場ではNGですよ」などと注意するのが良いでしょう。しかし会話が盛り上がっている時に、注意したり、たしなめたりするのはなかなか難しいものです。そんな時は、別の話題にやんわりと変えたり、会話をそれ以上盛り上げたりしないようにする、という対応をとるのも良いでしょう。

 

では「LGBTの人なんて、この職場にはいないよね」という声に対しては、どうしたらよいでしょうか。一つの案として、実は自分たちの身近にいるかもしれないということを「もしかしたら誰にもカミングアウトできずに、悩んでいる人がいるかもしれませんよ」という言い方で伝えてみてはいかがでしょうか。また、LGBTの人たちが日頃抱えている不安や困り事について、紹介してみるのも良いかもしれません。

 

「あの人って、男性?女性?どっちなのか分からなくて気持ち悪い」という声に対しては、どうでしょうか。これは相手の性自認(場合によってはジェンダー表現)に関わることですね。「ご本人の性自認は大切なプライバシーですから、ネタにしたり、からかったりするようなことはやめた方がいいと思います」等と伝えてみると良いでしょう。

 

差別的な言動をしている人は、性の多様性やSOGI、LGBTに関する適切な情報を学ぶ機会がなかったかもしれません。自分の身近にいるかも…と想像できないままだと、自分の言動が間違っていると気づくことや、それらを修正することは難しいでしょう。

 

一方で、LGBTの知人がいる人は、知人がいない人に比べると、SOGIハラにも気づきやすいという傾向があります。彼らの困っている気持ちや悩みを直接知っているからこそ、自分の周りにLGBTの人がいるかも……、SOGI(性的指向や性自認)に関するからかいが実は辛いなぁと思っている人がいるかも……、という想像力を持つことができると言えそうです。

 

もしもカミングアウトや相談をされたら

 

LGBTの人からカミングアウトや相談をされた時は、どのようにしたら良いでしょうか。

 

研修を行うと、このような質問が数多く寄せられます。基礎知識、社会の状況、関連施策についての意義については分かったものの、いざ自分がカミングアウトを受けたら適切に対処できるだろうか、間違ったことを言ってしまわないだろうか、と不安を感じる方がいらっしゃいます。

 

適切な知識を持つことによって、皆さんの日頃の行動や言葉は変化していきます。LGBTの人たちはその変化を見て、「この人なら分かってもらえるかも」「安心して相談できる人かも」と感じ、場合によってはカミングアウトすることを選択するかもしれません。そんな時は次の2点をおさえておきましょう。

1つめは、受容的な姿勢で受け止める、ということです。LGBTの人たちがカミングアウトする理由や背景はさまざまです。ただ知っておいて欲しいという場合もありますし、深刻な悩みを抱えている場合もあります。最初は驚くかもしれませんが、深呼吸をして、まずは相手の様子を観察しながら、お話の内容に耳を傾けてみてください。

 

2つめは、どこまで伝えていいかの確認です。いつ、誰に、どのようにカミングアウトをするかは本人が決めることですが、誰かに伝える必要がある場合は、必ず本人にその理由を説明して、意思を確認しましょう。本人が希望しない場合は、大切なプライバシー情報を第三者に伝えることがないよう、十分に気をつけてください。

カミングアウトを受けて、自分の心の中だけにしまっておくことが辛い方は、守秘義務のある相談窓口(自治体や弁護士によるLGBT電話相談など)を利用する方法もあります。

 

また、カミングアウトを受けた後、どう反応したらよいのか迷ってしまう、という声もいただきます。そんな時は、「大切なことを言ってくれてありがとう」「私に何かできることはありますか?」「いつでも相談してね」というような声かけをお勧めしています。

誰にカミングアウトをするか、多くのLGBTの人たちはかなり慎重に相手を選んでいます。日頃のコミュニケーションなどを通じて、偏見がないか、信頼できるかどうかを時間をかけて観察し、「この人ならネガティブな反応はしないかも」と感じて思い切って伝えた後に、肯定的に受け止めてもらえると、とてもホッとします。

 

カミングアウトを受けた方は、「どうして私に言ってくれたの?」というように、理由を尋ねてもいいかもしれません。「勝手に誰かに言ったりしないから、安心してね」という声かけも効果的な場合があるでしょう。そのようなやりとりを通じて、対話を積み重ねていくことで、新たな気づきや学びにつながるのではないでしょうか。

 

<執筆>

レインボーノッツ合同会社・NPO法人Rainbow Soup代表:五十嵐 ゆり

(レインボーノッツ様のコラムをDiversityGateのためにリライトいただきました)

一覧に戻る