ダイバーシティコラム

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男性育休義務化の新設で職場は大混乱!?: 他人事じゃすまされない、今から出来る準備と対策④

イクボスのススメ(準備期間を十分にとる:前回コラムより継続)

 

アタリのボスがいたり、ハズレのボスがいたりでは、企業がリピュテーションリスク(風評・悪評)にさらされる恐れがあるため、企業は今の時代にあった管理職を戦略的に育成していく必要があります。

 

そこで、管理職支援として、これからの上司像「イクボス」を組織として養成していくことをお勧めします。

 

イクボスというのは、イクメンのボスでもなければ、男性の育児参画を支援するボスという狭い意味でもありません。

 

イクボスとは、職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランス※1を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も上げつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司※2のことです(参照:NPO法人ファザーリング・ジャパン)。専門用語を使えば、ダイバーシティマネジメントが出来るボスと同義だと思っていただいて結構です。

※1ワークライフバランス…仕事と生活の両立

※2上司…経営者や管理職。男性管理職に限らず女性管理職も対象

 

つまり、部下を育て、会社を育て、社会を育てながら、自らも成長を続けられる、自分を育てられるボスであり、子どもが生まれるという人生の大きなイベントを上司として応援し、同時に成果の上がる職場づくりを実現していくボスです。部下のライフなんか無視してでも、とにかく業績が一番の「がむしゃらな激ボス」ではありません。

 

また、イクボスは日本の職場に数多く存在する業務の属人化の問題にも向き合うべきでしょう。属人化した業務を標準化して、チームで行えるようにするには、数か月の期間を要することが多いものです。男性育休を起爆剤として業務シフトを見直し、働き方改革を実践していくことが大切です。それにより、育児をはじめとした様々な理由で部下が休暇を取得しても、成果を上げることのできる職場が実現します。

 

具体的なイクボス養成施策は様々です。

役員・部長・課長・リーダー層を対象としたランク別研修・セミナー、管理職同士のワークショップ、イクボス養成ブック・リーフレット作成、イクボス養成動画や検定、部下との面談ロールプレイなど。それぞれは企業の特徴に合わせたカスタマイズが必要な場合が多いので、関心のある方は、ぜひお問合せください。

 

さて、前回に続き、出生時育休の準備期間を十分にとるためのポイントをお話します。今回は3つ目からです。

 

3つ目は相談窓口の運用です。

初めての制度ではトラブルがつきものです。ハラスメントやその疑惑があったとき、制度への誤解や申請、運用面でのトラブル予防に、相談窓口の設定はセーフティネットになります。

 

企業版両親学級とは?!

 

4つ目は男性社員向け・共働き夫婦向けの企業版両親学級の開催です。

母親学級、父親学級、両親学級というと、病院・産院や自治体が主催で行うものをイメージされると思います。日本のこうした学級は、母子保健法に基づいて、母親が主体となり父親はサポーターの位置づけであることがほとんどです。

しかし、男性の育児参画が進んでいる欧州では、父親が主体となって設計されているプログラムが多いそうです。日本でも出生時育休を広く男性に普及させていく1つの方法として、両親学級を今の時代にアップデートする必要性があるでしょう。

 

現在の両親学級は、医師・助産師・保健師などが講師になって、妊婦の身体の変化、出産の留意点、新生児の特徴といった、「出産」「赤ちゃんの世話」に偏向した内容となっています。しかし、ファザーリング・ジャパンが実施した「産前講座に関する全国調査」における“産後困ったランキング”では、「子育てが母親だけに偏った」が男女ともにトップ10入りしており、産後の困ったを解決できる内容にはなっていないと考えられます。

また開催日時や場所が、共働き夫婦にとって参加が難しい場合が多く、これも課題の一つです。

 

今後は、子育て経験豊富な父親やキャリア支援を行う育児中の講師が登壇し、夫婦で子育てする方法、仕事と育児の両立、両立支援制度の活用法、働き方やキャリアの在り方など、父親目線、共働き目線を入れたプログラムに改正するべきでしょう。

 

そして共働き夫婦が増えてきている日本の場合、受講環境の整備も課題です。特に日本の男性社員の多くは、職場にいる時間が長いため、勤務先やオンラインで受講できると参加しやすくなります。男性の子育て参画に向けた企業の姿勢を示すだけでなく、親となる夫婦の利便性も含めて、企業が両親学級を提供する効果は高いのです。

 

さて、次回は、企業版両親学級がなぜ出生時育休申請の十分な準備期間の確保につながるのか、企業版両親学級の具体的な事例、その他の方法、準備期間を十分に取れなかった場合について考えていきましょう。(次回コラムへ)

 

<執筆>

東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部 チーフコンサルタント、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事:塚越 学

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