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企業内のSOGI/LGBTQの理解促進:人事担当者として知っておくべきこと④

SOGIハラスメントとアウティングとは

前回コラム「知っていますか?改正パワハラ防止法」でも触れました、SOGIハラスメントとアウティングについて、今回は詳しく解説したいと思います。

 

SOGIハラスメント:相手の性的指向や性自認に関する侮辱的な言動

アウティング:相手の性的指向・性自認などを本人の了解を得ずに第三者に暴露すること

 

SOGIハラスメントとは何か

SOGI(ソジ)とは、性的指向(Sexual Orientation:どういった人を好きになるか)、性自認(Gender Identity:自分の性別をどう認識しているか)を組み合わせた言葉でしたね。この要素は誰もが持っているものですから、SOGIハラスメントはLGBTの人かどうかに限らず、誰もが被害を受ける可能性があることは念頭に置いておくべきでしょう。

 

図でご紹介しているSOGIハラスメントの事例はごく一部ですが、このような言動をどこかで見聞きしたことのある人は多いのではないでしょうか。

 

「LGBTなんて、この職場にはいないよね」(LGBTの人たちの存在の否定)
「あの人ってオネエっぽい。どっちか分からなくて気持ち悪い」(他人の性自認や見た目をからかう発言)
「お前はいつまでも独身だけど、まさかホモじゃないよね」(異性愛を前提とする姿勢)

 

これまでのコラムの中でも多様な性のあり方について、様々な角度からご紹介してきました。性的指向が異性ではない人、身体や戸籍上の性別と性自認に違和感がある人など、すでにこの社会で生活し、通学し、働き、暮らしています。異性愛者であることや、身体や戸籍上の性別と性自認が一致していることが「普通」「当たり前」というこれまでの偏った考え方を更新しないままだと、他者に「SOGIハラスメント」をしてしまっていることすら認識できない場合があります。

 

一方で読者の皆さんのように、適切な知識を持っている人であれば、先ほどのSOGIハラスメントに該当するケースについて、あれ?おかしいな?こんな言動をしたら傷つく人がいるのでは?とすぐにお気づきになるはずです。SOGIハラスメントを防止するためには、性の多様性、SOGIやLGBTに関する知識を得ることがとても大切です。

 

アウティングとは何か

アウティングとは、相手の性的指向・性自認などを本人の了解を得ずに第三者に暴露する行為のことをいいます。

図でご紹介している事例は、実際に起こった事例をもとに一部編集しています。

「きっと分かってくれるのでは…」と期待してその人だけに思い切ってカミングアウトしたところ、いつの間にか周りに言いふらされてしまった、というケースや、上司にだけ伝えていたところ想定外の場面で突然他の誰かに伝えられてしまったというケース…。

 

LGBTの人たちの多くは、無知や偏見に由来するハラスメントや暴力などから自分の身を守るために「異性愛者であること」「身体上の性と性自認に違和感がない」、いわゆる「普通であること」を装っていますが、こうしたアウティングによって、LGBTであることがばらされてしまうと、強い不安を抱えたり緊張状態を強いられます。その結果、心理的安全性が大きく揺らいでしまいかねません。

 

いつ、誰に、どのように伝えるかは、LGBT当事者ご本人が決めることです。アウティングは、LGBT当事者が自ら伝えるカミングアウトとは全く別のものです。性的指向・性自認(SOGI)は、病歴や不妊治療などと同様に、機微な個人情報に該当する、ということを改めて思い起こしてください。大切な個人情報をご本人の了承なく周りに話してもいいと、勝手に判断しないようにしましょう。

 

 

深刻なアウティング被害

2019年に実施された「性的少数者の意識調査」によると、アウティング被害にあったことがあると回答したLGBT当事者は、約25%にものぼりました。およそ4人に1人の割合で被害にあっていることが明らかになり、状況は大変深刻です。

悪意があってもなくても、アウティングはプライバシーの侵害であり、暴露されてしまったことによって、命を絶つ人もいる重大な問題です。

2015年には、同級生から他の友人たちに性的指向を暴露されてしまった学生が、心身に不調をきたし、校舎から転落して亡くなるという痛ましい事件が起きています。

また2020年6月には、性的指向を職場の上司にアウティングされ精神疾患を患った20代男性によって、事業所のある豊島区へ救済申立てが行われました。豊島区にはアウティング禁止を定めた条例があり、条例違反にあたるとして事業者への指導を求めた結果、会社側がアウティングを認めて和解に至った、という事例があります。

 

性的指向・性自認(SOGI)に関する情報は、大切な個人情報の一つであると認識し、職場における啓発や、SOGIハラスメントとアウティング防止に取り組みましょう。

 

<執筆>

レインボーノッツ合同会社・NPO法人Rainbow Soup代表:五十嵐 ゆり

(レインボーノッツ様のコラムをDiversityGateのためにリライトいただきました)

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